白内障

中高年の悩み、白内障

1. 水晶体の特性

白内障は、眼の中の「水晶体」という部分が濁って透明度が低下する病気ですが、そのお話をする前に、水晶体(レンズ)のことを少し見ておきましょう。

水晶体は眼球の中で凸レンズの働きをし、毛様体という筋肉が収縮すると、毛様体と水晶体の間を結ぶチン小帯という線維が緩んで、水晶体を膨らませ、ピントを合わせます。これを調節といいます。毛様体が緩むと、水晶体はチン小帯に引っ張られて平たくなります。この状態、つまり調節を緩めた状態が、水晶体が安静になった状態で、この時の屈折がその眼の屈折(近視、遠視、乱視)ということになります。

また、加齢により調節力は低下しますが、その理由は水晶体の弾力性の変化や、チン小帯と水晶体の位置関係の変化など諸説があります。また、加齢につれて水晶体の不溶性たんぱく質が増加することにより、混濁が増加して白内障になってゆきます。

2. 白内障になると

このようにして、加齢によって誰でも多かれ少なかれ水晶体の透明さが減退します。
そうなると、老人は全員が白内障になるように聞こえます。

それはある意味で正しいとも言え、75歳以上になると、細隙灯顕微鏡という眼科医が用いる診断用顕微鏡でみると、程度の差はあるものの、ほぼ全員に混濁が確認されます。しかし、加齢による生理的範囲内のものまで「白内障」として対応する必要はないので、それにより何らかの症状が出現したときに、白内障と言う病名をつけるのです。

何となくかすむ、という一般的自覚症状のほかに白内障の初期によくみられる症状として、「晴れの日などに外へ出ると眩しい」というものがあります。ただ、それは持続的なものでなく、明るい条件の時だけみられるものです。これは、水晶体の混濁により入射光が乱反射するからだと考えられ、グレアという言葉を使うこともあります。

さらに、水晶体の中央にある核の部分が混濁してくると、近視化が起こります(核白内障)。
今までの眼鏡が合わなくなったりします。ごくたまにですが、今まで老眼鏡をかけないと近くが見えなかったのが、最近裸眼で見えるようになった、という現象に気付くこともあります。本人は、目がよくなったと感じたりするのですが、核白内障によるいたずらということも多いのです。

3. 白内障のなりやすさと予防

実のところ、まだ白内障が出現するメカニズムが完全にわかっているわけではありません。

しかし、白内障には、加齢によるもののほか、先天白内障、ぶどう膜炎など眼球の病気に合併する併発(へいはつ)白内障、糖尿病白内障、皮膚原性白内障(アトピー性皮膚炎などの皮膚疾患に併発)、ステロイド性白内障などさまざまなものがあります。つまり、こうした病気は白内障を増大させる可能性がある危険因子というわけです。ほかにも、紫外線、放射線、打撲、喫煙などは危険因子とされます。

予防は、そうした危険因子を避けることが重要です。予防の目薬は、科学的根拠が薄いという意見もありますが、理論的には多少の効果は期待できると思います。

4. いつ手術をする?

最も多いのは加齢によるものですので、それに限って話を進めましょう。

外来で、よく「白内障手術はどうなったらするのですか」とか「視力がいくつになったら手術をするとよいのか」という質問をいただきます。確かに、白内障手術はここ20年で大きな進歩があり、比較的短時間で、安全な手術ができるようになりました。しかし、私は全く不自由を感じないのに、眼科医がみて白内障があるからと手術を勧めるのはいかがなものかと思っています。

不自由の感じ方も、その人の生活スタイルと関係があります。若い時と同じようにテニスやゴルフをやりたい、本も読みたい、仕事もしたいといった生活をする人と、ほとんど家から出ることのない余生を送っている人とでは、感ずる不自由さにも違いがあります。

したがって、一概に視力で決めることはできません。視力以外に、グレアもしばしば参考にします。眼科医がみて、白内障が中等度以上あり、その人がそのために生活上の不自由さを多少とも感じていれば、視力が1.0以上あっても手術適応があることになります。

5. 手術で挿入する眼内レンズ

現在ほとんどの白内障手術では、水晶体の混濁を除いたあとに眼内レンズを挿入します。

通常は単焦点レンズで、多くの場合は中間距離ないしやや遠方に焦点を合わせたレンズを挿入します。しかし、職業などで近方視力を特に重視する人では、近方に合わせたものを入れます。調節の力がほぼ消失しますので、遠方に合わせた人では近方用の老眼鏡は必要になります。

知人の眼科医は、ベッドで文庫本を読むのが最大の楽しみなので、それに合わせて手術をした方がいますが、そういう人では遠方を見るための眼鏡が必要になります。

最近では、二重焦点の眼内レンズを入れることが、先進医療(保険外)として行われます。遠方にも近方にもピントが合うように作られたもので、欧米では主流になりつつありますが、価格も高いので、得失をよく理解した上で決める必要があるでしょう。

6. 手術における注意点

白内障だけで、ほかの眼科的異常がない場合は問題になりませんが、何らかの異常がある場合、ごくまれに術後に難しいことが起こります。例えば網膜の病気がある人に白内障の手術をすると、明るくはなりますが網膜の病気のための見えにくさは変わらないか、時にはかえってそれが目立つようになってしまうことがあります。

また、何らかの原因で、一部の斜視の人のように、単眼しか使えない生活をしていた人の斜視眼の白内障を手術すると、術後複視(ふたつに見える)、混乱視、あるいは眩しさの増強などがあり、なかなか適応できないで、とても困ることがあります。黄斑など眼底に病気のある人や、強度近視の方などは、よく医師に相談してから手術を決めるべきです。

監修:医療法人社団 <済安堂 井上眼科病院名誉院長> 若倉雅登